赤安とライバボのためならわたし死んでもいいわ:二人の魅力をただただ語る

私はライバボが好きだ。赤安が好きだ、沖安が好きだ。秀零が好きだ。二人を取り巻く関係性の全てが好きだ。

二人の魅力は何よりも、大きく分けて上記の4層からなる非常に重層的な関係性にある。この多層的な関係性により、どの層を主眼に物語を構築するとしても他の二次創作では不可能なほどの厚みを物語に与えることができる。まさに超長編国民的漫画の重要な登場人物同士だからこそ成し得た、唯一無二の強みと言って良いだろう。言い換えれば、この二人の特別さは二人の関係が形をどんどん変えながらもずっと紡がれ続けているところにある。バーボンとライとしての黒の組織への潜入時代。両者は組織の構成員らしく振舞うという演技と探り合いのうちに関係を構築する。次いでスコッチの死に関する誤解という両者の運命を決定的に転換する事件の発生とライのNOCバレにより事態は新たなフェーズへ。残酷な話だが、この事件の特異性こそが現在までの長きにわたって二人を最高の組み合わせにしていると言わざるをえない。

幼馴染であるスコッチのNOCバレ。追いつき説得を試みると一瞬の隙をついてのスコッチの自殺。そしてその引き金となったのはスコッチを必死で探し回っていたバーボンが階段を駆け上がる足音。しかし次の瞬間階段を駆け上がってきたバーボンに、ライは己が裏切り者を処刑したかのように嘯く。彼にはスコッチは自殺であったと告げることができたはずだし、むしろそうしたところで何一つデメリットはない。それなのにどうして彼は今に至るまでずっと真相を隠し続けているのか。そんなのバーボンに親友はお前が殺したってことを伝えたくないからに決まっているし、そんなのもはや愛以外での何物でもない。本当によく(基本)子供向けの探偵物の中でこんなにも薄暗くそれでいて美しい関係性を描けたものだと思う。余りにも完璧。

 

f:id:rottenapple1:20190227123833j:plain

そしてこのシナリオの何より凄いところは五感に訴えかけてくるリアリティを持っているところだ。おそらく晩秋の肌寒い雑居ビルの屋上。真っ暗な中に響くのはスコッチの荒い息のみ。そこからライの低音での説得が始まる。その鈍く柔らかい音しかない空間に突如聞こえて来る硬質な金属製の階段を上ってくる足音。ライの一瞬の油断とスコッチの諦念と覚悟が一気呵成に事態を急変させる。響き渡る一発の銃声。血と硝煙の匂いのなか黒づくめのの男が振替る。一連の流れが映像的にも情報量が非常に豊かで美しい。

そしてこの事件の後、両者の関係は一旦途絶し一人取り残されたバーボンは赤井への強い恨みを抱え決して彼の死を信じず必死に足取りを追い続ける。つまり沖矢&安室期の到来だ。そして降谷は遂に赤井秀一生存の事実にたどり着き、赤安期が開始。しかもこの二人は時と場所によって偽名をきっちり使い分けているので、カプ名だけで大体の年代と関係性、当時の組織等関連の情報がわかるのも整った福利厚生の一つだ。剣呑な雰囲気なの中任務に従事し時に身体だけを繋げてしまうライとバーボンは、愛し合う秀一と零になることが約束されている。愛し合う秀一と零の背後には同様に、降谷零の強い憎悪と観覧車の上命がけで拳を交えた過去が存在している。なんと甘美なことだろう。関係の方向性もそれ故かなり自由だ。ダークかつ大人な関係、喧嘩ップル、熱烈な片思い、甘い蜜月。どんな関係性でもパロディーや大幅な設定改変(彼らが恋愛関係にあること以外)を行わずに描くことができるのはまさに奇跡としか言いようがない。

これまで私は主にスポーツ漫画関連の高校生カップルを嗜んできたのだが、この場合当たり前ながら二人の現在の関係性やお互いの性格からどのようん傾向の二次創作が生み出されるかはだいたい決定される。定番の頼れる先輩と可愛い後輩、裏をかいての後輩による下克上、ライバル同士の喧嘩ップルなどなど。年を重ねた二人を書きたい場合は年齢改変として基本的に自分の妄想を綴ることとなる。勿論そんな中好みの二人を見つけるのが醍醐味でもあるのだが、やはり生み出せる作品の幅では圧倒的に赤安に軍配があがるのだ。

しかもこの二人基本的にパロディーいらず。媚薬等変なお薬を飲ませたければ組織の実験か任務、社交界への潜入もマフィアとの銃撃戦もお手の物、つかせたい職業があれば潜入先にしてしまえばいい。赤井のイギリス出身の過去と降谷の謎めいた子供時代を利用してパブリックスクール設定だって組もうと思えばいくらでも組めるし、海辺で出会っての一夏の恋の話だって余裕(パリ零というジャンルがあるのをご存知だろうか)。そう彼らの可能性はあまりにも幅広い。

もしこの二人の二次創作を読んだことがなく、この文章を読んでいただいたのなら是非一、二作品だけでも目を通していただきたい。間違いなく真理への開眼となるはずだ。