人生まるまま真似するオタク:推しの経歴真似てたらエリート街道まっしぐら

 趣味の楽しみ方

 趣味の愛し方は人それぞれだ。例えば鉄道好きに撮り鉄乗り鉄などいろいろな種類があることはよく知られている。私の場合、趣味の一つに漫画やアニメ鑑賞があるのだが、私はおそらく一風変わったオタクだ。

 

 人生自体のトレース

 私は好きになったキャラクターの人生をとにかくトレースしようとする。推しと同じ生き方をすることが私の愛だ。もちろん漫画の多くは青春の一場面を切り取ったものなので、大学や社会人での進路は描かれないことが多いのだが、そこは可能な限り予想する。推しと同じ場所で同じ空気を吸って日常を共有することで、彼が何を考えてどう生きているのかを理解したいのだ。推しと同じ場所で日常生活を送ることで退屈な毎日も、発見と幸福に満ちた日々になるのだ。嫌なことがあったって推しにもこんな苦難があったのかと思えれば辛いことは一つもない。正直自分でもちょっと気持ち悪い。三次元の相手にやったらストーカーまっしぐらだったので、二次元をこよなく好むオタクに育って本当に良かった。

 

 赤司くんは難易度高い

 中学生時代にオタクとなった私にとって、模倣人生の最大のビッグイベントは大学進学だった。高校生の頃私は黒子のバスケ赤司征十郎くんの大ファンだった。あのちょっとクレージーなまでの苛烈さと苦悩。天帝の目とかいう訳わかんないチート能力に代表される圧倒的な実力。そのためまさに赤司くんにフォーリンラブしてしまった私自身の進路選択は、とりあえず彼の将来を妄想することから始まった。あまり考える余地もなかった。どう考えても赤司征十郎東京大学に進学する。別にそうと決まったわけではないのだけれど(今考えれば海外進学もあるのだし)、当時の私にはそれは確定した赤司くんの将来像だったのだ。ついでに今吉さんも好きだったのだが、悲しかな彼も東大に行きそうだった。やるしかない。そこから先は単純だ。とにかく私も東京大学に行かねばならない。幸運にも勉強は割と向いていたので努力した。辛いこともあったけれど赤司くんと同じ場所に行くためと思えば安いもの。模試だって赤司くんは一位だったに決まっていると思えば努力するしかない。一位は無理でも上位に入った。試験当日も、赤司くんもここで試験を受けたのか、休憩時間はやっぱり外を散歩したのか等々アホなことを考えていたので、全然緊張しなかった。そして私は無事合格した。

 因みに高校時代のコピーの最大の難関は部活だった。やはりキセキの世代の気持ちを味わうためには何が何でも全国大会に出ねばならぬ。やるしかない。そこでに行かなければ赤司くんと同じものは見えないのだ。結局、残念ながらバスケットボールという点まではさすがに真似られなかったのだが、私は無事にとある部での全国大会進出を果たした。

 

 推しを追って海外進出

 そして大学入学後私には新たな推しが出来た。

 赤井秀一と安室透だ。腐女子でもある私にとって赤井秀一と安室透のカプはまさに神が与えし至高の組み合わせだった。純黒が公開された時なんて自分に都合良すぎて夢なんじゃないかと思った。ただどう考えても安室くんも東大法卒だったので私は心の底から安堵した。自分はまだ推しと同じ空気を吸えているのだ。安室くんと同じと思うと、大して美味しくない食堂も三ツ星に感じるし、ボロボロの教室もここで安室くんも寒い思いしたのかなとか思えばまるで天国だ。しかし悲しかなここで私大変なことに気づいてしまった。赤井秀一が教育を受けたのは太平洋の反対側のアメリカだ。これは当時の私にとって割と絶望的な事実だった。推しカプの片方の生育環境を全く共有していないなんて由々しき事態だからだ。そこで私は決意した。そうだアメリカに行こう。どうにも赤井の通った大学の情報はなかったので、とにかく私は全米の有名大学を調べ上げた。雰囲気、難易度、人種比率、アファーマティブアクションの有無、卒業生の進路などなど。私はやるときはやる女なのだ。そして勝手に赤井さんの卒業大学を決めた私はそこへの留学を勝ち取った。留学先はとにかく萌えの宝庫だった。勉強はもちろんの事、赤井さんは間違いなく体も鍛えていただろうから私もジムにも通い健康な日々を送った。赤井さん、ありがとう。

 そしていざ職業選択。どのキャラかは秘密だが、私はまたも推しをトレースした。そして今も推しのおかげで人生まさに絶好調。ありがたい限りだ。なんというか意味がわからないレベルの行動力で正直我ながら気持ち悪い。

 

 性癖に感謝

 ここまでくると私の人生における一番の僥倖は、ヤクザ、ヤンキー、クズ等のキャラを好きにならなかったことだろう。正直私のトレース能力は異常だ。ヤクザが推しだったら今頃どこぞの鉄砲玉をやっていたかもしれないと思うと背筋が寒くなる。ビッチよりも一途な受けが好きなのもラッキー。それにいつもいつも頭がいいキャラを好きになったのもラッキーだった。自分の性癖に万歳三唱したいくらいの幸運だと思う。

 私は隠れオタクなのでこの事情をリアルで誰かに話すことは一生ない。ただ努力家、志が高いなど褒めちぎってくれる先輩、同輩、後輩の言葉を聞くたびに、私をここまで導いてくれた素晴らしい推しがいるということを少し伝えたくなってしまう。推しへの愛は私の人生の原動力だ。

そしてこの孤独で変態的な営みは案外ものすごく楽しい。

天才な推しを持つ方々、ぜひ試してみてほしい。